発達障害を探る「愛着」という新たな視点『愛着障害』

好奇心(その他)

この本を選んだ理由

メンタルトレーニングの先生から勧められました。
ちなみに先生が進めた理由は「母親と自分の愛着について知識が必要」だからだそうです。
自分としても興味があったので、何度か読み直しながら進めました。

おすすめの読み方

まずは目次を読みましょう。そうすれば全体だけでなくかなり詳細な部分まで理解することができます。
こちらの本は目次がとても細かいことが特徴です。2ページほどで1つの節が分かれているため、1つの章の中にたくさんの節が存在します。

この本の形式として、「主張の節」「具体例の節」「具体例の節」といったように主張の後に具体例が並ぶのが1つの構成となっています。具体例1つずつに1つの節が割り振られているため、目次から見ると主張が分かりやすいです。

印象に残った点

目次

発達障害の原因は愛着にあり、愛着への対応は充分とは言い切れないです。
愛着という問題に向き合い、探っていきましょう。

1章:愛着スタイルの基本知識と分類

この章では愛着スタイルとは何か、愛着スタイルのパターンについて示されています。

愛着スタイルとは、人に対してどのように振る舞うを定める根幹となるものです。
幼少期の親との関係や環境によって形成されます。

愛着スタイルは以下の4種類に分類されます。

  • 安定型:
    ストレスを感じた際、適度な愛着行動を示します。
  • 回避型:
    ストレスを諦めることで回避します。感情表現が薄くなる特徴があります。
    親からの愛着不足が原因となります。
  • 不安型:
    強い執着と拒絶という両極端な愛着障害を示します。
    親からの愛着が神経質かつ過干渉であることが原因となります。
  • 混乱型:
    回避型と不安型が入り混じった、一貫性のない愛着障害を示します。
    安全を与えてくれるはずの親に恐怖を抱き、混乱していることが原因となります。

不安定な愛着状態の子供は、それに対応するために統制型の愛着パターンを身に着けます。
以下の3つの戦略を活用し、子供なりに周囲に秩序をもたらそうとします。

  • 支配的コントロール:
    暴力や脅しによって支配しようとします。
  • 従属的コントロール:
    おだてることで相手の気分や愛着を支配しようとします。
  • 操作的コントロール:
    上記の二つを織り交ぜ、心理的衝撃によって同情や共感、反発を得ることで支配しようとします。

大人の安定型は約3分の2しかいません。つまりは2人いれば、1人が不安定型となる確率は5割を超えるということです。そう考えると、不安定型が少数派とはとても言えないと実感できるのではないでしょうか。

2章:何故、愛着障害が作られてしまうのでしょうか。

親との健全な愛着を形成できなかったことがまず1つです。

親との健全な愛着の形成は、子供の愛着スタイルに大きく影響します。5歳までは敏感な時期と言えますが、その中で段階を踏んで愛着形成が進みます。0~1歳半までの愛着の絆は、ことさらに大きな影響力を持ちます。

特に養育者の不在、交替は子供に強い衝撃を与えます。こちらに対しては、著名人を具体例に説明されています。
例:川端康成、太宰治、ルソー、夏目漱石、ミヒャエル・エンデ。

太宰治の乳母に対する愛着の経過は見ていて、痛ましくも参考になりとても印象に残りました。
彼は乳母に対して実の母親を超える愛着を持っていたにもかかわらず、乳母の死に対して衝撃を覚えなかったのです。

3章:愛着障害がもたらす症例

3章では、愛着障害が本人にどのように影響するか取り上げられています。
親との関係が不安定、信頼や愛情が維持されにくい、ストレスに脆くうつや心身症になりやすい。といった弊害を25ほど紹介されております。

更に、たくさんの著名人が具体例として取り上げられています。この本に載っていたため、興味を覚えた偉人が多数存在し、新たに伝記や作品を呼んでみようと思っています。

3章はまさに目次を読めば事足ります。より詳しく知りたいという人が本文を読むと楽しめるでしょう。
愛着障害によって自己肯定感が低い人間がこの章を熟読することは、ちょっとお勧めしません。
「やはり自分はこういう人間なんだ・・・」と自己嫌悪に陥る可能性があるのです。

4章:愛着スタイルを見分ける

最初に「愛着スタイル診断テスト」を受けてみました。
診断内容は伝えませんが、結果としては「合計 a_3、b_12、c_16」であり、不安型と回避型の両方が強い「恐れ-回避型」と診断できました。
自分を型にはめるわけではないですが、一定の基準を得られたのは良かったです。

特定の場面での対応は愛着スタイルによってどのように変わるのか。その具体的な場面と対応を丁寧に説明されています。場面の具体例としては、ストレスの処理方法、仕事中の対人関係などなどです。

5章:それぞれの愛着スタイルの詳細説明

各スタイルの詳細説明となります。安定型、回避型、不安型の愛着スタイルが対人関係、愛情にどのように影響するのかが記されています。

問題解決や分析思考を好む私には、この章が一番面白かったです。本を順番どおりに読むよりも、こちらを先に読んだほうが分かりやすいと思います。

学校の問題に対して、挑戦しながら理解するのではなく、定義を理解してから取り掛かるような人は回避型とはどういう行動を取るのか考えながら2,3章を読むよりも、5章から読んだ理解が進むかもしれません。
少なくとも私の場合、2章3章よりも5章の方が読みやすかったです。

6章:愛着障害の克服

愛着の傷を乗り越える方法が多数紹介されています。これからについて書かれているため、特に熟読しました。

驚いた点として、従来の精神医療は共感ではなく理論で作られたため、愛着を理由とする障害には対処できないと言い切ったことです。

愛着障害の克服方法は大きく分けて3つです。

  1. 安全基地を得る
  2. 愛着の傷を修復する
    1. 「子供のころ不足していた愛情表現を経験する」
    2. 「傷つけられた事柄について、言語化する」
  3. 役割と責任を持つ
    1. 「仕事に取組み、自分の居場所を作る」
    2. 「否定的認知ではなく、肯定的に考える」
    3. 「自分が自分の親となる」

「愛着の傷を修復できた」その結果。

「2.愛着の傷を修復する」段階を進んでいくと「怒りが赦しに代わる」と記されていました。過去の傷と向かい合う事を徹底的に進めると親に対して、悪いところだけでなく良いところを見つけようとするらしいのです。

親が自分を否定していると思う事は、自分が自分を否定することに結びついています。逆に、親と和解する事で、今後に自信を持って生きていけるようになるのです。

しかし、これについては、疑問があります。親に対して赦しを与えるというのは、意味が分からないのですよ。
『愛されなかった時どう生きるか』に出てくる「母親依存」「母親最優先の思考」から、怒りを覚えることで脱出した私にとって、怒りを覚えるなというのは、再び母親に取り込まれる恐れがあると考えています。怒りを覚えることでようやく母親に対して気後れしないで済んでいる私には、何でまた赦さないといけないのかと思うのです。

 

確かに「母親依存による甘やかした赦し」と「独立安定した客観的な赦し」では、「赦し」という言葉以外の全てが異なるのだろうと予想はついています。しかし、今、母親に対して少しでも警戒を緩める気にはなれないですね。

究極の克服方法「自分が自分の親になる」

「3.役割と責任を持つ」方法の1つ、「自分が自分の親となる」は愛着障害を克服するための究極の方法として紹介されています。自分が親として自分にアドバイスを行い、自分は自分の中の親に相談しながら生きていくというものです。

つまり、自分の中に絶対明確に自分の味方となる自分を作ることだと考えています。
『母がしんどい』の最後辺りでそのあたりのエピソードを漫画で読むことが出来ました。

まとめ

愛着障害について基本知識とスタイルの診断、克服方法と得るものが多い一冊でした。
途中、読み進めることが苦しい章がありましたが、いつか愛着障害を克服したときに、
読み直してみたいと思っています。

著名人の苦闘が具体例として紹介されているため、イメージがしやすいです。
私の場合、川端康成に興味を持ち、彼の作品を読んでみようと思いました。

 

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